オープンAI サム・アルトマンCEOの解任騒動と顛末を解説

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ChatGPTの開発企業がCEOを解任⁉

2023年11月17日、ChatGPTを世に送り出し、世界のAI開発を牽引するオープンAI(OpenAI)の取締役会がサム・アルトマンCEOを解任したとの衝撃的なニュースが駆け巡りました。
これだけでもビッグニュースだったのですが、この話はその後数日の内に二転三転し、ジェットコースタームービーさながらの展開を見せました。
今回は世界的な注目を集めたアルトマンCEOの解任を巡る一連の動きを紹介していきます。

企業価値はNTTやユニクロ並?!

オープンAIはChatGPTを生み出し、AI分野の中心にいる新進の企業です(正確には非営利組織と企業体の複合組織です)。
非上場ながらその企業評価額は12兆とも15兆円とも言われ、日本の上場企業の時価総額と比較するとNTTやファーストリテイリング(ユニクロ)と肩を並べる水準になります。
創業時はイーロン・マスク氏もメンバーに名を連ねていましたが、現在はイーロン氏は離脱しています。
マイクロソフト社が今後数年で100億ドル(約1兆5000億円)もの出資をする事で合意しています。
米国を代表する非上場企業と言えます。

OpenAI DevDayを開催したばかりでの解任劇

オープンAIは11月6日に同社初の開発者向けのイベント「OpenAI DevDay」を開催し、アルトマンCEOが革新的な新機能や新サービスを次々に発表して同社の勢いを印象付けたばかりでした。
ところが11月17日にオープンAIの取締役会はアルトマンCEOの解任を議決し、発表します。
解任の理由は「検証した結果、アルトマン氏は取締役会とのコミュニケーションにおいて常に率直ではなく、取締役会の責任遂行に支障をきたしている」とアルトマン氏のコミュニケーションの欠如を挙げ、後任にはCTOのミラ・ムラティ女史が暫定CEOとして就任することも発表されました。

推進派のアルトマン氏と慎重派の役員

金曜日の正午に役員のミーティングが開催され、取締役会の会長であるグレッグ・ブロックマン氏以外の全役員が参加する中でアルトマンCEOは自分が解雇される事を知らされました。
ブロックマン氏も取締役から外される事が決定されました。
ブルームバーグ誌の報道によれば、AIの開発を推し進めるアルトマン氏に対し、AIの安全性や商業化の面でより慎重だった取締役会、とりわけ共同創業者のイリヤ・サツキーバー氏との間で意見の対立があったとされています。
アルトマン氏の解雇を受けてブロックマン氏も辞任を表明し、アルトマンCEO時代は終わり、新体制が動き出すものと思われました。

マイクロソフトは寝耳に水?!

この動きに衝撃を受けたのがオープンAIに多額の出資をしていた企業です。
マイクロソフトは子会社を通じてオープンAIに100億ドル規模の出資をする事で合意していますが、同社がこの決定を知らされたのは発表の1分前だったと言われています。
マイクロソフト社以外の出資企業は発表で始めて事態を知るという状況でした。
マイクロソフトのサティア・ナディラCEOが激怒した事は言うまでもありません。

社員が実名でCEO復帰を要求

更に衝撃を受けたのがオープンAIで働く社員達でした。
彼らは直ぐに動きっk、アルトマン氏がCEOに復帰しなければオープンAIを退職すると相次いで実名で表明しました。

復帰交渉は二転三転

こうした動きを見て取締役会は直ぐに掌を返し、アルトマン氏と復帰の交渉を始めます。
アルトマン氏も前向きな姿勢を明らかにし、ゲストカードで自分の会社に入る様子をXに投稿するなど穏やかな雰囲気も流れ始めました。
しかし程なく復帰交渉は難航とのニュースが流れ、事態は再び緊張します。
そしてマイクロソフト社のナディラCEOがアルトマン氏の入社を発表してしまいます。
アルトマン氏はマイクロソフトのAI部門を任され、ブロックマン氏も合流するとの事でした。

新CEOはシアー氏⁉

オープンAIの取締役会側も正式なCEOの就任を急ぎました。
アンスロピック社のダリオ・アモデイCEOに打診するも断られ、動画配信サービスを手掛けるトゥイッチ社のエメット・シアーCEOを後任に任命しています。

社員の9割が反対

一方、オープンAIでは従業員達の復帰要請が更に拡大し、最終的には770人の従業員の内700人、実に9割が「アルトマン氏が復帰しなければ辞任してマイクロソフトに転職する」という書簡に署名する空前の事態に発展しました。
署名者の中には解任劇の首謀者とも見られていたイリヤ・サツキバー氏の名前もありました。

アルトマン氏のCEO復帰

11月20日、オープンAIはアルトマン氏が同社のCEOに復帰することを発表します。
ブロックマン氏も復職する事を明らかにし、社員と一緒に写った写真をXに投稿しました。
最終的に引き続きアルトマン体制が維持される形で事態は一応の決着を見た訳です。

最大の勝者はマイクロソフト

一連の騒動はアルトマン氏の勝利となりましたが、彼以上に大きな利益を得たのがマイクロソフトでしょう。
オープンAI経営陣との関係は深まり、今回の立ち回りで好感度を大きく挙げました。
米国のIT技術者、特にシリコンバレー界隈の技術者の間では給料よりもその会社で働くことが”Coolかどうか”で企業を選ぶ傾向が強いと言われ、優秀な人材を引き入れる上でイメージの向上は大きな武器となります。
それにしても金曜日に事態を知ってから週末を含めて数日の間にアルトマン氏とブロックマン氏の受け入れを決め、オープンAI社員の受け入れの形を作り、更に二人の復職を祝福したナディラCEOの立ち回りとスピード感は見事という他ありません。
日本の大企業がアルトマン氏を引き入れようと思ったら何ヶ月掛かる事でしょうね。

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