【ChatGPT前史】AIはいかに人間を追い越したか。チェス、将棋、囲碁のプロ(人間)との対戦を追います。

AI全般
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汎用型AIの前に目指したのはゲーム!?

汎用型のAIともいえるChatGPTが登場するずっと前からAI(コンピュータ)開発は人間の能力に追いつき追い越す事を目指していました。
単純な計算速度では早い段階でコンピュータの優位が確立されていましたが、次の指標として開発者達が目指したのがチェス、将棋、囲碁といった知的対戦型ボードゲームで人間と対戦する事でした。
ルールが明確かつ勝敗がはっきりしていて、一般の人にも訴求しやすいという事で開発目標としてうってつけだったのです。
そこで今回は汎用型AI開発前史として、代表的なボードゲームであるチェス、将棋、囲碁を取り上げて、それぞれの人間とAIの対戦を紹介します。

Ⅰ.チェスとAI

チェス対戦プログラムとコンピュータ性能の進化

チェスを指すコンピュータの開発の歴史は1950年代にまで遡ります。
情報理論の権威クロード・シャノン(Claude Shannon)氏が人間とチェスのゲームを対戦できるプログラムを開発したのが始まりとされています。
ただプログラムはコンピュータの技術的成約もあって指し手に非常に時間が掛かり、レベルも低いものでした。
ただその後はコンピュータ技術の進化とも比例してチェスのプログラムも進化し、特に1980年代以降には重要な指し手の分析方法(アルゴリズム)が幾つも生み出され、チェスのみならず他のゲーム用のプログラムにも影響を与えました・

チェスの王者が敗れる衝撃

チェスはコンピュータと人間の能力を競わせるテーマとして最適な題材と捉えられ、欧米の企業や研究機関が100億円クラスの予算を注ぎ込んで開発を進めました。
1997年5月11日。当時15年に渡って世界王者のタイトルを保持し続けた史上最強のチェス王、ガルリ・カスパロフ氏がスーパーコンピューターとの6番勝負に挑み、9日間に及ぶ戦いの末にコンピューターが勝利しました。

スーパーコンピュータ「Deepblue」

勝ったのはIBMが送り込んだ世界最高速の計算スピードを誇るスーパーコンピューター「ディープ・ブルー(Deepblue)」です(当時はAIという言葉は一般的では無くコンピューター対人間という構図で語られていました)。
大半の専門家の予想を覆してコンピューターが勝利した事でコンピューターが人間を凌駕する時代がいつか来るとのイメージが具体化されました。

Ⅱ.将棋とAI

将棋ソフト開発の予算は無い!?

将棋は取った相手の駒を自分の駒として投入できるなど複雑な動きが多く、チェスよりもコンピュータでの対応が難しいゲームと考えられてきました。
しかもチェス用コンピュータが巨額の予算を掛けて開発されていたのに対し、将棋用コンピュータは多くな場合殆ど予算が与えられず、もっぱら研究者らの趣味的活動によって開発が続けられていました。

初の将棋ソフト

将棋へのAIの本格的なアプローチは、1967年に日立製作所が自社の大型コンピューター、HITAC5020Eを使って詰将棋を解かせたのが最初と見られます。
1975年には、当時早稲田大学大学院の院生だった瀧澤武信氏(後のコンピュータ将棋協会会長)を中心とするプロジェクトチームが世界初の指将棋用コンピューターシステムを完成させました。
しかしながらその指し手には無茶苦茶な選択も多く、到底プロの棋士と並べて比較をできるものではありませんでした。
その後1980年代に入るとゲーム市場でさまざまな将棋ソフトゲームが発売されますが、総じて能力は高く無く、アマチュア有段者クラスの相手になるようなものではありませんでした。

ボナンザ(Bonannza)の登場

ただコンピューター業界ではコンピュータ将棋の選手権が開催されるようになり、互いに競い合って性能向上を図りました。
2005年、物理化学者の保木邦仁氏が趣味として開発した「ボナンザ(Bonannza)」が無料公開され、翌年の世界コンピューター将棋選手権で初出場初優勝を飾ります。
更に2009年にはボナンザのプログラム・コード( ソースコード)が公開され、これを足がかりに将棋AIの開発が一気に加速して行きます。
2010年には将棋AI「あから2010」と清水市代女流王将との公式対決が開催され、女流王将が敗れるという結果に終わり、衝撃が走りました。

電王戦のスタード

2012年からはプロ棋士とAIが対戦する公式団体戦の「電王戦」が開催される様になりました。
いざ電王戦が始まるとA級棋士でさえAIに破れる結果となり盛り上がります。
第2回電王戦(2013年)ではプロ棋士側が3敗を喫してしまいます。
第3回電王戦(2014年)では豊島将之七段の1勝のみという所までプロ棋士側が追い込まれます。
豊島七段(当時)は棋士同士による研究会からAIによる独自学習へと練習の場を移し、他の多くの棋士にも影響を与えました。

遂に名人を負かす

2016年には、遂に名人位を持つ佐藤天彦名人とAIとの対決が実現しますが名人が敗れる衝撃の結果となります。
佐藤名人は翌年も電王戦に敗れ、人間に対するAIの優位は確定的なものとなりました。

Ⅲ.囲碁とAI

指し手が多く複雑な囲碁

囲碁はチェスや将棋と比べて指し手の数が遥かに多くて複雑であり、「ボードゲーム最後の砦」と考えられてきました。
実際、人間を脅かすような囲碁ソフトは中々登場しませんでした。

囲碁の試合が成立した事への評価

1968年に発表された囲碁コンピュータ「ゾブリスト(Zobrist)」はルールを覚えたての初心者くらいのレベルとされていました。
それでも「囲碁の対戦が成立すること自体が凄い」と評価されていたのです。

コンピュータ囲碁の大会

1980年代に入るとコンピュータ囲碁初の世界大会「USENIX」が開催されます。
1985年には台湾の実業家、応昌期氏がING杯を設立し、2000年までに人間の名人に勝てれば4000万台湾ドルの賞金を出すと開発者を煽りました。
2000年代に入ると「モンテカルロ法」と「ゲーム木探索法」という技術を融合させた「モンテカルロ木探索」という指し手の推測技術が囲碁AIを加速させました。

アルファ碁(Alfa Go)の登場

2016年1月、グーグルの傘下企業であるディープ・マインド社(DeepMind)が開発した「アルファ碁(Alpha Go)」がプロ棋士の樊麾二段と5局対局して全勝したと権威ある科学雑誌「ネイチャー」が掲載します。
樊麾二段は2015年まで欧州の囲碁選手権を3連覇していた実力のあるプロ棋士です。
同年3月には韓国囲碁界のトップ棋士であった李世乭九段とアルファ碁が五番勝負を実施し、アルファ碁が4勝1敗で勝利しました。
この結果により囲碁の世界でもAI(コンピュータ)が人間を超えた事が印象付けられ、囲碁界を震撼させました。

まとめ

チェスでも将棋でも囲碁でも、当初Ai(コンピュータ)は人間には勝てない、あるいはいつかは勝てるにしてもそれはもっとずっと未来の事という風に考えられてきました。
ところが実際には多くの人々が予想していたよりも10年〜20年ほど早く、人間の最高峰を打ち負かす所まで進化してしまいました。
その進化のスピードには驚くばかりですが、AIはその後も進化を続けてChatGPTAによって新たな段階に進んでいます。
今後も想像を超える進化の先に何が生まれるのか、注目していきたいですね。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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