AIを社会の中心に押し上げたChatGPT
AI(人工知能)の急激な進化は既に大きな社会的インパクトを与えており、今後益々大きな影響を与えて行くと見られています。
その起点となったのが自然言語処理能力を持つ会話型AI「ChatGPT(チャットGPT)」です。
ChatGPTが公開されてわずか1年余りの間に、AIは社会の中核技術として意識されるようになりました。
将来、ChatGPTの登場前と登場後で時代を分けられそうなほどそのインパクトは絶大です。
AI技術を社会の中心に押し上げた存在と言えるかも知れません。
そこで今回は、このタイミングで今一度ChatGPTの変遷や特徴、世の中に与えたインパクトなどを時系列を意識しながら振り返って置こうと思います。
尚本サイト「AIツール倶楽部」は誰にでもわかりやすい記事にすることを基本にしていますが、本記事については少し専門的な内容を含めていますので御了承下さい。
OpenAIの設立と初期の使命
ChatGPTを開発したオープンAI(OpenAI Inc.)は、2015年に当初は非営利団体として設立された組織です。
オープンAIは、AI技術の進化と普及を目指すと共に、技術のオープンソース化を通じてAIの発展を民主化することを重視し、非営利な研究機関として設立されました。
ただオープンAIの組織の体質は少しずつ変化し、2019年にはマイクロソフトから巨額の出資を受けるようになりました。
GPT-1の登場
オープンAIは2018年に自然言語を処理できるAI「GPT」を発表しました。
このGPTは後継モデルと区別する必要もあって現在ではGPT-1と呼ばれています。
GPT-1はAI用の文章問題で既存のAIモデルを上回る成績をマークして注目されました。
GPTって何?!
さて少し難しい話ですが、GPTとはどのようなAIなのでしょうか。
GPTはジェネレーティブ・プレ=トレーニングド・タランスフォーマー(Generative Pretrained Transformer)の略です。
直訳すると「生成したトレーニング済みの変換機」といった意味合いになります。
トランスフォーマーは文章の隠れている部分を予測するAIアルゴリズムです。
例えば「私は毎朝歯を◯◯ます」という文章から◯◯を推測させると、日本人であれば殆どの人が容易に”磨き”という言葉を推測します。
これをAIに予測させる場合、多くの文章を使って学習させると次第に”磨き”という言葉に近いものを推測できるようになって行きます。
GPTはこうした方法を活用して学習(訓練)を積み重ねる事で、多様な文章問題に対してそれまでのAIを圧倒する成績を叩き出したのです。
2019年、オープンAIはGPT-1の強化版となるGPT-2を発表しました。
GPTの開発手法ではパラメーター数や学習するデータ量を大きくすれば性能が上がる事がわかりました。
パラメーター(媒介変数)という言葉が解りにくいですね。
とにかく学習の質と量を増やせば性能が上がるとわかった訳です。
そこでオープンAIは、実に800万ページに及ぶウェブページから抽出した大量の文章で訓練し、GPT-1の12〜13倍ものパラメーターを持つAIを開発しました。
それがGPT-2です。
GPT-2の文章生成能力は格段に上がり、オープンAIの予想をも上回るものだった様です。
GPT-2では人間の文章とほとんど見分けがつかないような文章を生成できるようになりました。
マイクロソフトの出資
GPT-2の開発に成功したオープンAIは、更に高性能なAI開発へと突き進みます。
開発の方向性ははっきりしていましたが、その実現にはGPT-2開発より遥かに大量のデータを使って、圧倒的に計算能力の高いコンピューターで学習(訓練)をさせる必要があり、途方も無い予算が必要でした。
こうした背景もあり、オープンAIは2019年にマイクロソフトから最初の巨額出資を受け、協業体制を確立します。
また、営利企業(株式会社)のオープンAI社を設立し、非営利組織の傘下に置く独自の体制を構築しました。
GPT-3の発表
そして2020年、オープンAIは更に巨大なパラメーター量を持った「GPT-3」を発表します。
GPT-3は飛躍的な性能の向上を果たし、多様な文章やコードまでもを生成できる能力を保持します。
更には、GPT-3の言語処理能力を調整した「イントラGPT」を発表します。
ChatGPTの衝撃
そして衝撃の時がやってきます。
2022年11月30日、オープンAIはGPT-3よりも更にパラメーター量を増やし、学習を強化した「GPT-3.5」を実装した会話型AI、いわゆる「ChatGPT」を公開します。
実際には9月から試験運用をしていましたが、2ヶ月間のα版運用を経て公開されています。
普段使っている自然言語でAIと会話ができるChatGPTの登場は世界に大きな衝撃を与え、2023年2月にはユーザー数が1億人を超える爆発的な広がりを見せます。
直感的に”凄い”と感じられるツールが無料で提供された事のインパクトは大きく、史上最速で1億ユーザーを突破したアプリケーション*となりました。
*2023年7月にサービスを開始したメタ社のSNS「スレッズ(Threads)」が5日で1億ユーザーを突破し、記録を更新しています。
有料版のChatGPTプラス(ChatGPT Plus)
オープンAIはChatGPTの有料プランである「ChatGPT プラス」の提供も開始しました。
日本でも2023年2月11日から利用可能になっています。
ChatGPTプラスの料金は月額20ドルで、ChatGPTに導入される最新の機能を順次利用できる他、応答の速度や制限が無くなるといったメリットが得られます。
ChatGPT以後のAI世界
ChatGPTの登場によってAIの世界は正に「一変」してしまいました。
ChatGPTが広く波及していった2023年3月辺りから生成AIツールと呼ばれるAIツールが続々と公開される様になり、しかも画像生成、音声生成、音楽生成、動画生成などあらゆる方面で圧倒的な進化を感じさせるツールが出る状況になりました。
AI業界では「毎日が産業革命」と真顔で囁かれるほどに圧倒的な盛り上がりを見せたのです。
GPT4.0
オープンAIの開発はその後も進化を止めません。
2023年3月14日にはGPT-3.5の進化版である「GPT-4」を発表しました。
GPT-4はChatGPTの有料プランである「ChatGPT Plus」のユーザー向けに提供が開始されました。
GPT-3.5よりも格段に回答の精度が上がり、安全性も向上しました。
プラグイン
ChatGPTの有料プラン「ChatGPT Plus」のユーザーには「プラグイン(Plug in」というサービスも提供されました。
プラグインは外部のサービスが自分の持つデータや機能をChatGPTと接続してより専門性の高い問いへの回答を可能にしたものです。
スマートフォンのOSに対するアプリのような機能と考えればイメージしやすいでしょうか。
例えばChatGPTは2021年9月までの情報しかカバーしていませんでしたが、最新の株式情報を提供するプラグインを接続すれば最新の株価情報についても回答が得られます。
コード・インタープリター
またオープンAIはChatGPTの有料プランユーザー向けに「コード・インタープリター(Code Interpriter)」という機能も実装し、開発者界隈をざわつかせました。
コード・インタープリターは多様な使い方ができる機能ですが、簡単に言ってしまうとプログラム・コードを書いて、実行まで可能な機能です(端的過ぎて怒られそうですが…)。
例えば「電卓のアプリを作って」と指示すると電卓アプリに必要なプログラムを勝手に考えてコードを作ってくれます。
*コード・インタープリターは公開後2ヶ月ほどで「アドバンスド・データ・アナリシス」という名称に変更されるとアナウンスされていましたが、11月には再び「コード・インタープリター」という名称が使われています。
GPT-4V(Vison)
2023年9月にはGPT4の改良版となるGPT-4Vが公開されました。
4VのVはVisionを意味しているとの事です。
GPT-4Vでは画像や図形の内容を読み取ったり、画像に写っている内容から必要な回答をするといった事ができるようになりました。
手書きの図でも内容を把握して回答ができるのは驚きです。
こちらも有料プランのみの提供となっています。
オープンAI デブ・ディ
オープンAIは2023年11月6日に、開発者向けカンファレンス「オープンAI デブ・デイ(OpenAI DevDay)」を開催しました。
同社として初めての大型イベントとなったこの場ではさまざま革新的技術や新サービスが発表され、世界中にニュースが流れました。
発表された主なサービスは以下の通りです。
・GPT-4ターボ(GPT-4 Turbo)
・GPTs
・GPTストア
GPT-4ターボ(GPT-4 Turbo)
ChatGPTの新モデル、GPT-4ターボ(GPT-4 Turbo)が発表されました。
当面は有料プランのChatGPTプラスのユーザーに展開されます。
GPT-4ターボでは書籍で300ページ相当のデータを読み込めるようになり、JSONモードなど開発者向けの機能も追加されました。
企業向け契約をしている際の使用料も大幅に下げられるなど随所に格段の改善が見られます。
GPTs
誰でも簡単に自分の必要な用途にカスタマイズしたGPTを作れる機能が「GPTs」です。
ChatGPTと会話しながらカスタマイズできるようになっていて、オリジナルのロゴも創ってくれますし、名前の候補も考えてくれます。
作ったGPTは他の人とシェアする事もできます。
GPTストア
オープンAIがユーザーが作成したGPTを販売したり購入したりできる「GPTストア」も発表しました。
2023年12月10日時点ではGPTストアの提供は確認できていませんが、準備が整い次第サービスが開始されるものと見られます。
※2024年1月にサービスが提供開始されました。
まとめ
ChatGPTの登場はAI技術の社会的重要性を大きく押し上げる契機となりました。
ただその後もChatGPTの進化は止まらず、公開から一年余りの間に信じられないペースで革新的な機能を追加し続けています。
今後も驚くような発表を重ねてくれるに違いありません。
新しい技術や機能に狼狽えるよりは、ワクワクしながら待ちたいですね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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